2019年の10月1日から10月5日まで、インドネシアのスマトラ島のコーヒー生産者、KETIARA生産者組合を訪問しました。その際に見学した収穫から出荷までのプロセスとクオリティーコントロールをご紹介いたします。
当店ではフェアトレード、オーガニックで品質に優れたスマトラ島北部、アチェ州のコーヒーを常時ご用意しています。入荷ごとに、その時仕入れられる最高品質のコーヒーを選んでいますが、KETIARAはその中でも特に安定して高いクオリティーを誇っており、当店には欠かせない生産者となっています。
スマトラ産コーヒーの生産地と名称
インドネシアでは各地でコーヒーが生産されていますが、スマトラ島で作られたコーヒーは「マンデリン」と呼ばれています。マンデリンはスマトラ島中央の地区名でここからスマトラ島のコーヒー生産が始まりました。しかし現在マンデリン地区ではコーヒーはあまり作られておらず、むしろ隣のリントンニフタ地区のものが有名です。スマトラ島中央部では他にトバ湖周辺でもコーヒーが作られています。
また当店の使用しているスマトラ北部アチェ州のコーヒーは、Laut Tawar湖を中心とした標高の高い地域で生産されており、この地域に暮らす民族の名前からGayo(ガヨ)コーヒーと呼ばれています。
しかし当店も含めてスマトラ島で作られたすべてのコーヒーには「マンデリン」という名称が使われており、非常にわかりにくいことになっています。これは日本だけでなく、世界中で同じようです。当店もいずれはマンデリンではなく「スマトラ ガヨ」としてこの地域のコーヒーを販売したいのですが、「マンデリン」という名称のほうが圧倒的に通りがいいのでこの名称を使い続けてしまっています。
KETIARA生産者組合の概要
羽田→シンガポール→スマトラ島のメダンと飛行機で移動。そこから夜行バスでアチェ州山岳部の街、タケンゴンへ。KETIARA生産者組合のオフィス兼精製所はこの街にあります。
KETIARAは丁寧な収穫と精製のプロセスにより最高品質のコーヒーを生産しています。日本のブルーボトルコーヒーやアメリカのSTOMPTWON COFFEEなどでも採用されているそうです。もちろん当店でも積極的に仕入れる生産者です。
(オフィスにこんな歓迎の横断幕を用意してくれました!)
KETIARAは更に3つのグループに分かれています。女性と若手で構成されるRATU KETIARA、シニアのグループで構成されるKOPEPI KETIARAの2つのグループがフェアトレード、オーガニックのコーヒーを生産しています。残りのPT KETIARAというグループは認証のないコーヒーを生産しています。
当店ではRATUかKOPEPIのどちらかのコーヒーを仕入れていますが、どちらかと言えばRATUを仕入れることが多いです。この2つのグループはスペシャリティーコーヒーの生産に特化しており、クオリティーの高い豆を世界中に輸出しています。
組合に参加している農家さんの規模は本当に小さく、1〜2ヘクタールの農地でコーヒーを栽培しています。2ヘクタール以上の農地を持っている人はほとんどいないそうです。
コーヒー収穫から生豆になるまでのプロセス
まずオフィスの近くにあるコーヒー農園を訪問します。この日はKETIARA生産者組合全体のリーダーであるMrs.Rahmaの農園(2ヘクタール)を訪れました。
収穫は農家さん自身でも行いますが、繁忙期や他に働き口がある場合、人を雇うこともあります。こういった農園で働く方は1日で130.000から230.000ルピア(約1000-2000円)の収入を得ることができます。
(Mrs. Rahmaと一緒に)
収穫は月に2〜3回ほど行います。9月から6月までが収穫収穫期ですがピークは10〜12月と2〜4月だそうです。コーヒーの品種はティムティム、アテン、カツーラ、ブルボン、ティピカです。一つの農園にこれらの品種が混在していますが、ブルボンだけを栽培している農家さんも多いそうです。
収穫と同時に剪定や雑草取り、肥料散布などを行います。またコーヒーの木は50年程度で収穫量が落ちるので、植え替え作業も行わなくてはいけません。
KETIARAでは熟したコーヒーの実(チェリー)だけを丁寧に収穫しています。一度収穫した後にさらにバスケットをハンドピックして成熟度がよくないチェリーは取り除かれます。こうした丁寧さがクオリティーの高さにつながっています。
収穫後はチェリーを水に浮かせて再選別したあと、機械でパルピング(pulping)をして、果肉を取り除きます。このあと種子の表面のムシラージ(ぬめり)がついたまま8時間発酵させます。
発酵が終わり次第、水洗いをして乾燥させます。1〜2日程度乾燥させ、水分保有量が40%になったら種子の表皮(parchment)を取り除く作業をおこないます。英語だとhulling、日本語だと脱穀とも言われます。スマトラ島では世界でも他に類を見ないスマトラ式(wet hull)と呼ばれるプロセスを採用しており、水分量が極めて高い状態で脱穀を行うのが特徴です。このあとに水分保有量が12-13%になるまで再び乾燥を行います。
この地域では州都のメダンにコーヒー豆を運んで脱穀を行う業者もいますが、品質の管理を徹底するためKETIARAではタケンゴンの自前のミルで脱穀を行います。
これで焙煎前の状態、いわゆるコーヒーの生豆になります。しかしまだまだ出荷までは手間がかかります。
コーヒーの生豆は丁寧にハンドピックされます。KETIARAのRATUとKOPEPIでは高いクオリティーを維持するためにハンドピック繰り返し、合計3回も行います。
さらに機械で漏れ残りのないよう石を取り除きます。
村ごとのコーヒーを焙煎してカッピングを行い、各村のコーヒー豆をバランスよくブレンドします。
(ブレンドの割合を計算中)
コーヒーは農作物ですのでその年の天候によって、また標高(1100-1600m)や育てている品種によって味わいが異なります。年間を通じて高品質のバランスの取れた味わいを維持するために、丁寧にブレンドが考えられています。こうしてようやく出荷できる状態となります。
やはり高品質のコーヒーを作るのには手間がかかる
KETIARAでの収穫から出荷までのプロセスをご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
収穫から出荷まで、コーヒーは多くの段階を経て作られています。一概にコーヒーといっても熟した豆だけをこまめに摘み取る、ハンドピックやブレンドなどの手間によってコーヒーの味は大きく変わっています。珈琲屋からしてみると、やはり丁寧に育てられた良いコーヒーを探して仕入れることが面白みであり、気を使うところだと思います。
当店ではKETIARAにかぎらず、丁寧に作られた世界各国のコーヒー豆を販売しています。特にフェアトレード、オーガニックのコーヒーを中心に取り扱っています。KETIARAのコーヒーは2019年12月より販売を開始いたします。
WEBSHOP: https://velvet-coffee.jp
次回はコーヒー豆を育てる農家さんの様子とフェアトレードの効果についてご紹介いたします。